2021年07月13日
ある昼下がり、パリ支局の机にコーヒーをこぼしてしまい、染み付きのテーブルクロスを洗って窓の欄干に干そうとした。
すると、隣室から男性2人が窓越しに「それはダメだ」とジェスチャーをしている。景観を重視するフランスでは屋外に洗濯物を干すのはご法度。中庭に面した窓なので許容範囲ではとも思ったが、素直に従って室内の窓に近い場所に干し直した。
ところが、男性らはなおも窓をたたいて同じジェスチャーを続けてくる。さすがに度を越していると感じて隣室へ抗議に行くと、男性らはワインボトルを開けて酒盛りの最中。「私がアジア人だと思って、ばかにしたのではないか」と聞くと、1人は「そうだ」と言い切った。もう1人は「まあまあ。あなたも飲んだらどうか」と言った。
翌日、隣室の企業宛てに正式な抗議メールを出すと、すぐに社長から返事が来た。「そうだ」と言ったのはクライアントで、同社の男性社員が接待していたという。丁重なおわびとともに「この国では差別は決して許されない」とも書かれていた。フランスに来て最初に経験した差別的言動。これが最後だと願いたい。 (谷悠己)