2021年07月12日
屋外で将棋や酒盛りを楽しむおじいさんたち。韓国ソウル都心のタプコル公園は、日本統治からの独立運動の発祥地で知られるが、近年はお年寄りのたまり場となっている。一角で人気の「老人食堂」に入ってみた。
新型コロナウイルス禍で、知らないおじいさんと相席。一瞬ひるんだが、引き返せない。メニューは、葉物野菜のスープと白飯、キムチのセットのみ。注文せずとも、運ばれてくる。常連客にならって雑炊のようにしてすすると、格別にうまい。
1食2000ウォン(約190円)。安さにも驚く。ソウルの一般的なサラリーマンはランチで平均1万ウォン程度は使うとされるが、老人食堂は別世界だ。高齢者貧困率が日本の2倍の40%超という韓国の格差問題がのぞく。
1950年代の創業当時は、スープにドジョウを入れていたが、その後、低価格を守るため、ドジョウはやめて、市場で安価な牛骨を仕入れて煮込んでうま味を出す特製スープを考案したという。「うちは、お客さんが『ありがとう』と言ってくれる店。もうからないけど、やりがいがある」。75歳の女性店主の人情味が、スープの隠し味だと知った。 (相坂穣)