2021年07月28日
東北、沖縄、四国…。日本で各地に取材で訪れた際は、地元の新聞を手に取って読むようにしてきた。それぞれの土地の人々の生活、政治経済の課題などを俯瞰(ふかん)できる気がするからだ。
先日、韓国南部の済州(チェジュ)島に訪れる機会があり、例によって済州の新聞を探し始めた。離島だが人口60万人超の観光都市で、地元日刊紙は6紙もあるという。ホテルのロビーで読めるかと期待したが、ない。コンビニや売店を回っても、なかった。
ならば、新聞を宅配する販売店に行くしかない。インターネットで調べてみたら、30分くらい歩いた所にありそうだ。やや遠いが、新聞を手にしてありがたさを感じようと徒歩で向かったら、まさかの結末。店はなくなり、居酒屋になっていた。
「あの新聞店が閉じたのは去年かな。わが家も10年くらい前までは新聞を取っていたけど、今はこれで読んじゃう」。50代のタクシー運転手が、スマートフォンを指した。
米国で地方紙の廃刊が相次ぎ、「ニュース砂漠」が広がっていると言われるが、済州でも砂漠化が起きていると痛感した。 (相坂穣)