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中国カンゼ 「党史学習」の足元は

2021年08月03日

 四川省カンゼ・チベット族自治州カンゼ県にある愛国主義教育基地とされる博物館を訪れると、尾行してきた地元の若い当局者が話しかけてきた。「私、ここに来るの初めてですよ」。思わず「本当?」と声が出た。こちらはここを訪れるのを目的の1つに、北京から飛行機を乗り継いで遠路はるばる来たからだ。一方、この当局者の職場からは車で5分とかからない。

 そもそもこの博物館は地元当局が管理しているはずだ。そう尋ねると、「私とは違う部署だ。忙しくて時間がない」と言い訳がましい。折しも7月の中国共産党創建100周年を前に、党員や公務員は党史の学習を強要されていた。「忙しいのは党史の学習で?」と話を向けると、「それもありますね」と笑う。

 当局者は博物館の見学中も親しげに話しかけてくるが、展示内容について聞くと、「知らない」などと申し訳なさそうに答える。ここも党史の重要な一部を展示しているはずだが、習近平(しゅうきんぺい)指導部が進める党史学習の内容とはズレているのかもしれない。あるいはこの当局者が「学習」をサボっているだけなのだろうか。そう考えると、少し親しみもわく。 (中沢穣)