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仏オーヴェール・シュル・オワーズ ゴッホが生んだ縁

2021年08月23日

 「今日が彼の命日(7月29日)だったのね。なんて運命かしら」。西洋絵画の巨匠ゴッホが自ら命を絶った日に、パリ近郊の村オーヴェール・シュル・オワーズの墓地を訪ねた。9月からの来日展を前に追悼に訪れた人に話を聞くのが目的。最初にやってきたのは根っからの愛好家ではなく、バカンスで付近をトレッキング中にたまたま立ち寄ったという女性だった。

 ゴッホと日本との関係性について質問してみたが、ピンときていない様子。その代わりに、一昨年の夏に2週間滞在したという日本旅行の話を始めた。

 東京でレンタカーを借り、西へ一路。飛騨高山の自然美に感動し、京都では4日がかりで寺社巡り。広島の原爆資料館では、核の悲劇を目の当たりにして涙が止まらなかったという。

 その日本で間もなくゴッホ展が開催されることを伝えると、「この大変な時期に名作を生で見られる幸運を得たのが日本の人たちで良かった」と、自分のことのように喜んでくれた。

 「ここであなたに会ったのも運命ね。また日本へ行こうと家族と話したばかりだったから」。その日が訪れることを願わずにはいられない。 (谷悠己)