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米ソルトレークシティー 称賛はありがたいが

2021年08月26日

 米発祥のキリスト教分派モルモン教徒たちが作り上げた街として有名な西部ユタ州ソルトレークシティー。異端として迫害を受けた人々が越えてきた山脈を巨大な神殿のある市街地から眺めると、空がかすみぼんやりとしか見えない。米西部で広がる山火事の煙の影響だという。

 山々には冬、良質の雪が降り、2002年には冬季五輪が開催されている。折しも東京五輪・パラリンピックが開幕しようとしていた時で、地元の人との話題は必然的に五輪に及んだ。

 「新型コロナウイルスのワクチン接種が進んでいないことは知っているが、アスリートを尊重し、無観客で開催を決めたのは勇気ある決断だ。日本でなければできなかった」。取材先のパットさんはそう称賛した。

 街の人々は、米中枢同時テロから5カ月でテロの恐怖に屈せず予定通り五輪を開催したことを誇りに思っているという。「世界中の異なる文化が集まってきた。素晴らしい体験だった」

 19年後、日本は新型コロナの感染拡大を防げていない。世界の人々との交流もできない。ほめてくれるのはありがたいが、日本の状況を考えると複雑な気持ちになった。 (金杉貴雄)