2021年10月15日
日本では、家に上がるときには靴を脱ぐ。しかし、米国では靴のまま自宅に上がる家庭も多い。
米中西部カンザス州ローレンスの元米軍兵士ダニー・ショルセンさん(38)も「靴のまま上がって。俺もこのままだから」と、どっかとソファに座った。
ダニーさんは、イラクとアフガニスタンに従軍した。さまざまな軍務をこなし、ありのままには書けないような凄惨(せいさん)な場面に何度も出くわした。1つ質問すれば、10数分にわたって詳細に話してくれる。ただ、興に乗って靴のままソファの上であぐらをかくように座ったりしていて、ソファが汚れてしまうのではないかと心配になった。
「靴を脱ぐのが怖いんだよ。急な戦闘に備えなきゃ、て思っちゃってね」
戦争の精神的な後遺症がないか聞いてみると、そう答えた。冗舌で普通に見えるダニーさんも、やはり心的外傷後ストレス障害(PTSD)の診断を受けていた。
身体だけでなく心もむしばむ戦争の恐ろしさを感じるとともに、思慮の浅い自分を恥ずかしく思った。
(吉田通夫)