2021年10月21日
カイロの路上でソフトクリームマシンのような機械をよく見かける。新品もあれば、年季の入った古びたものもある。気になって知人に尋ねると、どうやら冷水機らしい。しかも、故人のために遺族が設置しているというから驚きだ。
冷水機には故人の名とともに、「祈りをささげてください」などとひと言添えられ、コップも一緒に置いてある。近くの店などから電源を引き、誰でもいつでも冷たい水が飲める。店側が設置者に電気代を求めることも特にないらしい。
エジプトなど中東では水は貴重だ。サウジアラビアなど湾岸諸国では、海水淡水化事業に多額を投じて水を確保している。冷水機を設置して貴重な水を提供することは、「死後の善行」と考えられ、亡くなる前に家族に機械の設置を頼む人もいる。
暑い夏に無料で水が飲めるのはとてもありがたい。ただ、路上には善行の「痕跡」もあふれている。壊れても放置されたままで、中にはごみ置き場と化している冷水機もある。ごみを片付ければ生前の善行になるのに、とも思うのだが。故人はどう思っているのか聞いてみたい。 (蜘手美鶴)