【本文】

  1. トップ
  2. コラム
  3. 世界の街
  4. アメリカ・カナダ
  5. 米アトランタ 忘れていなかった…

米アトランタ 忘れていなかった…

2021年11月01日

 米南部ジョージア州アトランタに、元米軍兵士のダン・ベルシンスキーさん(37)を訪ねた。2009年にアフガニスタンに従軍し、両脚と左手小指を失い、10年には当時副大統領だったバイデン現大統領に体験を伝えた人物だ。

 米国は01年にアフガンと開戦し、すぐに当時のタリバン政権を倒した。その後も「民主国家の建設」を名目に泥沼の戦いを続け、今年8月末の撤退間際にはタリバンの復権を許す事実上の敗戦となった。

 ダンさんは、この「民主国家の建設」という目的が「根本的な誤りだった」と語る。地元住民には「米軍が去ってもタリバンは残る。迷惑だから、もう話し掛けないで」と言われ、アフガン政府軍はタリバンの襲撃を恐れて選挙のための警備を放棄して逃亡した。「銃を持った外国人が強制しても、国の形は変えられない」

 バイデン氏はその会話を覚えているだろうか。「覚えていないんじゃないかな」とダンさんは笑ったが、2週間後、バイデン氏は終戦に伴う演説で「国家を建設するための戦争はしない」と宣言した。やはり、覚えていたのだろうか。 (吉田通夫)