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北京 兵士になりたくない

2021年11月04日

 「うちのレベルの大学だと、兵士になりたがる学生は、ほとんどいない。親も反対するし、ほかにいい就職口はいくらでもある」。北京のある名門大学で学生に人民解放軍を就職先として検討しているか聞いたところ、男子大学生(21)が正直な思いを語ってくれた。

 軍は、特に所得水準が高い都市部で志願兵確保に悩んでいるといわれる。宇宙やサイバー空間での戦いが重要になる中、中国軍も人工知能(AI)など高度な知識を持った学生の獲得に力を入れるが、そう簡単ではないようだ。

 中国ではもともと兵士は、大学に進学しない貧しい農村出身の若者が多数を占めていた。だが大学進学率が5割を超え、ITや金融など好待遇の企業への就職口も増えた今、兵士を希望する学生は減少。軍は給与や手当などの待遇改善を進め、新兵確保に懸命だ。

 中国政府は若者や子どもたちへの愛国教育強化を進め、国への貢献を求める。だが長く続いた「一人っ子政策」の結果、自由気ままな生活に慣れた多くの若者にとって、肉体的にきつく束縛が厳しい兵士の生活は耐えがたいようだ。 (坪井千隼)