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バンコク 再出発はさっぱりと

2021年11月09日

 2カ月以上、伸びた髪を整えに、初めての美容室を訪れた。バンコクのオフィスのすぐ隣。「もうすぐ完成するから、必ず来てね」。顔見知りになった店主に声を掛けられていたのを思い出し、いつものローカル理髪店から少々奮発した。

 昨年来、街の風景はすっかり変わった。なじみだった食堂はいつの間にか店を畳み、路地にはシャッターが目立つ。美容室が開店したのは、1年以上「空き室あり」の看板が掲げられていた建物。新型コロナウイルス対策の行動制限の緩和に合わせ「ワクチンも進んでいるし、攻めに転じるとき」と力強い。

 カットしてくれたイェーさん(44)は、勤務先の店舗が今年に入りコロナ禍で閉店し、ちょうど声を掛けられたという。「腕ひとつでやってきたから、お得意さんもいる。どこで働いても大丈夫」とたくましい。

 生粋のタイ人だが、母が再婚して日本で暮らしているという。しばらく会えていないが「この新しい店でカットしてあげたい」と再会を心待ちにする。肝心の仕上がりは。刈り上げがすぎた気がしたが、どこまでも前向きな気持ちをもらい、何も言えなかった。 (岩崎健太朗)