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ソウル 廃線跡にて北を思う

2021年11月24日

 レールに耳を付けたり、枕木の上で2人で手を取り合ってハートの形を作ったり…。カップルや友人同士で写真撮影を楽しむ姿が目立つ。駅舎や列車を模した構造物もあり、会員制交流サイト(SNS)の“インスタ映え”に絶好の環境らしい。

 若者の街で有名なソウルの弘大入口(ホンデイック)。韓国鉄道公社「京義(キョンウィ)線」が地下化され、近年、廃線となった跡地を利用して整備された遊歩道「京義線 森の道」。私は郷愁を誘う日本の廃線も好きだが、これほどオシャレに再生された所は知らない。

 京義線は、日本が20世紀初頭に朝鮮半島の植民地支配を進める中で、当時、京城と呼ばれたソウルと中国国境の新義州(シンウィジュ)を結んだ過去がある。戦後、南北が分断され、軍事境界線を越えた列車の行き来は途絶えた。

 秋の休日、ソウルの廃線脇ではススキが揺れ、屋外テーブル席を若者らが埋め、ビールやワインを味わっていた。皆、新型コロナウイルス禍を忘れたかのように明るい表情を見せる。

 平和な雰囲気にしばらく浸った後で、北朝鮮側に残っている鉄路に思いが巡る。沿線にどんな人々の暮らしや風景が広がっているのか。 (相坂穣)