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ニューヨーク 路上の折り鶴は今…

2021年12月03日

 ニューヨークを舞台にした小説の多い作家ポール・オースターの「ムーン・パレス」では、世捨て人のような主人公の青年がホームレスになり、セントラルパークの片隅で暮らす時期がある。先日、散歩中に「彼が寝泊まりしていたのは、確かこのへんだったな」と思い出すと、そこにもひっそり座り込む男性がいた。

 この街の路上でホームレスを見かけるのは珍しいことではないが、男性の場合は寄付のコイン受けに加え、色とりどりの折り鶴に囲まれていた。赤、青、白、金色…。気になって1ドル(約110円)を入れると、男性は鶴を差し出しながら「韓国から来た」と教えてくれた。

 若く見えるが40代。8年前に渡米したものの、2年前に勤務先がつぶれた。「あれから路上で暴力を受けたり、身分証明書をとられたり…。でも今はレストランの面接の結果を待っている」。鶴は暴力に反対する思いを込めて折っているという。

 小説の主人公はその後、のちの恋人と友人に救い出され、新たな人生を歩み始める。あの男性はどうなっただろう。職場の机にかざった折り鶴を見ながら時々考えている。 (杉藤貴浩)

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