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ドゥシャンベ 大国に1歩も引かず

2021年12月09日

 旧ソ連圏の軍事同盟のプレスツアーで中央アジアのタジキスタンに出張した。アフガニスタン情勢の取材が目的だ。事務局のロシア軍は「タジク入国にビザは不要」と説明していたが、首都ドゥシャンベの空港に着くと、入国管理官は「ビザなしの入国は無理」と怖い顔。私を含めた外国人記者の入国を拒んだ。

 タジクはソ連圏で最も貧しい国の1つ。ロシアは帝政期、ソ連時代を含めて支配し、現在もタジク領内に軍事基地を置く。ロシア軍は「同行記者なので入れて」と言えば、ビザなし入国も可能だと考えていたらしい。

 でも、その国にはその国のルールがあるわけで、おいそれと曲げるわけにはいかない。2時間も足止めをくらい、翌日にビザを発行してもらうことで決着を見た。私は心の中でタジクの入国管理官に拍手を送っていた。ロシア相手に1歩も引かない。これぞ主権国家の振る舞いだと。

 ロシアのプーチン大統領は常日頃、国連安全保障理事会の5つの常任理事国が世界を動かしていると言わんばかりの発言をしているが、果たしてどうか。タジクの役人が頼もしく感じられた。 (小柳悠志)