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ロンドン 同僚の遺志継ぐ決意

2021年12月10日

 10月中旬、ロンドンの職場のテレビから、英下院議員たちの笑い声が聞こえてきた。ただ、画面に目をやると、議場を埋めた議員の多くは喪服姿。その3日前、有権者との対話集会中に刺殺されたエイメス議員(69)を追悼する特別会合だった。

 参加者はそれぞれの思い出を述べ、エイメス氏のユーモアを示す逸話にはみんなで笑い、政治活動への真摯(しんし)な姿勢が語られると死を悔しがった。大勢がたたえたのは同氏が英国の民主主義の体現者だった点。議員として40年近く、有権者の声を議会に届け続けたことだ。

 英国では5年前にも、有権者との対話集会に絡んで下院議員が殺された。テロリストが侵入しやすい集会開催への不安は強いが、エイメス氏はネットで日時や場所を告知し、月2回、地元住民らと膝を交えていた。

 「国民が議員と率直に語るのは英国の偉大な伝統だ」。ジョンソン首相は追悼会合で生前のエイメス氏の言葉を紹介し、他の議員も同氏の姿勢を継ぐ意思を示した。対話集会への不安はより増したはず。だが、議会中継からは、民主主義を守るため、有権者との緊密さは保つという決意を感じた。 (藤沢有哉)