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バンコク ツリーに回復の願い

2021年12月21日

 仕事帰りに立ち寄ったバンコクのショッピングモール。入り口前広場に、高さ40メートルほどの緑のツリーがそびえていた。本格点灯はまだ先だが、飾り付けが進み、早くもクリスマスの足音が聞こえてきた。

 仏教国のタイだが聖夜の前後、都心部はきらびやかなイルミネーションに彩られる。汗ばむ陽気で季節感はしっくりこないが、タイ人にはすっかり風物詩だ。「ツリーは幸せの象徴で、みな写真を撮りに集まります。今年は『回復』の願いも」とマーケティング幹部のナタキットさん。例年より早めの準備といい、意気込みがうかがえた。

 タイでは年末に向け、1年半以上続いた新型コロナウイルス対策の「鎖国」から「開国」に舵(かじ)を切った。日本人を含め在留外国人は渡航の制限解除を歓迎するが、観光や娯楽産業以外ではタイ人の反応は微妙だ。「国内の感染防止を安定化させることが先」「すぐにまたロックダウンだ」と冷めた見方もある。

 この国のツリーは「幸せに新年を迎えよう」と息が長い。手帳を見ると、今年は1月18日まで確認された。無事に年を越し、その先も。青空に映えたツリーに願った。 (岩崎健太朗)