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米シンシナティ 自由を求め渡った橋

2021年12月22日

 米中西部の要衝オハイオ州シンシナティを空路で訪れるには、南隣のケンタッキー州の空港に降り、州境を越えることになる。とはいえ空港からはレンタカーで20分ほどの近さ。両州を隔てるオハイオ川を渡ると、すぐに大リーグの伝統球団レッズの本拠地や名物料理「シンシナティ・チリ」の看板が見えてくる。

 しかし歴史を振り返れば、この川を越すことの重みを考えさせられる。19世紀中盤の奴隷解放前まで、オハイオとケンタッキーは、北部「自由州」と南部「奴隷州」に分かれ、南部からの逃亡奴隷にとってシンシナティへの渡河は自由の獲得を意味した。

 レンタカーを橋のたもとに止め、歩いて川を渡ってみた。幅は300メートルほど。満足な橋もない当時、追っ手におびえ、闇に紛れて船に乗った黒人たちの恐怖はいかばかりだったか。

 そう思いを巡らせていると、ジョギングの若者2人が「オハイオまで競争だ」と笑顔で橋を駆けていった。奴隷解放から長い歳月が流れても、この国に残る人種問題。いつかこの橋を軽快に渡るように乗り越えられる日を見たい。 (杉藤貴浩)

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