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ローマ 永遠の都で見た暗部

2021年12月16日

 「これが一番早く出発する。さあ、早く乗って」

 20カ国・地域首脳会議(G20サミット)の取材で到着したイタリア・ローマ郊外のチャンピーノ空港には、市内行きのバスが数台止まっていた。運転手にせかされ、その一台に乗り込んだが、一向に発車しない。問い詰めた乗客に運転手が悪びれることなく言った。「まだ客が少ない。今出発したら仕事にならないじゃないか」。チケットを見返すと支払った額より若干少ない額が記されていた。怒りよりも、日銭を稼ぐことに懸命な彼への同情の念が湧いた。

 ローマ市の外れにあるサミット会場までタクシーに乗ると、美しい中心街を抜けた途端に老朽化で薄汚れた集合住宅が目立ち始め、「永遠の都」の暗部を見た気がした。「あの住宅群はもう何年も見放されている。G20で世界のことを話すより、腐敗しきっているこの国の政治家を総入れ替えしてほしい」。運転手の男性は語気を強めた。

 サミット会場やメディアセンターは完璧に整備され、記者用の食堂にはローマの名物料理が並んだ。おいしかったが、運転手らの顔を思い出すと複雑な気持ちになった。 (谷悠己)

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