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中国・玉渓 ゾウは幸せもたらす

2021年12月27日

 「ゾウは幸せをもたらす動物だという。殺さずに故郷に戻すことができてよかった。壊された建物は修理すればいいんだから」。アジアゾウに自宅の門を破壊された雲南省玉渓(ぎょくけい)市の農家、張剛さん(40)は語った。

 雲南省では昨年春から野生のゾウ15頭の群れがミャンマー国境近くの生息地から北上。畑を荒らし民家を壊しながら500キロ放浪し、今年5月ごろには省都の昆明や玉渓市街地に進入、多くの住民が避難した。張さんの村にも6月にゾウの群れが入り込み、畑や民家を破壊した。

 だが政府は一貫して麻酔銃の使用など手荒い対応を避けた。トラックでバリケードを築き、好物の果物で誘導。ゾウは今年の夏に生息地に戻った。政府は10月に昆明で開催した生物多様性をテーマにした国際会議で、一連の対応を中国の野生動物保護の好事例としてPRした。

 今回、被害を受けた町や村の住民からゾウへの憎しみの言葉は聞かなかった。張さんらによると、ゾウを敬う文化があるタイの影響なのか、雲南省でもゾウを敬愛する人が多いという。政府の対策PRはさておき、住民のゾウへの寛容な姿勢は印象的だった。 (坪井千隼)