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オマーン・サラーラ お香の陰にあるもの

2022年01月31日

 アラビア半島のオマーン南部サラーラに、樹液で作る珍しいお香がある。その名も「乳香」。白い小石のような見た目で、火を付けると白い煙が立ち上り、花のようなさわやかな香りが広がる。

 その乳香に欠かせないのが、アフリカ東部から来るソマリア人だ。乳香の木は山に自生し、たどり着くには険しい山中を3~4時間歩く必要がある。そうした重労働を一手に引き受けるのがソマリア人で、地元のオマーン人は「山に行けるのはタフな彼らだけ」と口をそろえる。

 オマーンの人口は約500万人で、うち半数近くをインドなど外国人が占める。オマーン人が避ける肉体労働などを外国人が担い、乳香の樹液採取もその1つ。ソマリア人の独壇場となっており、高収入を得るために違法採取に手を染める人もいる。

 貴重な乳香の木を守ろうと、政府は違法採取の取り締まりを行っている。ソマリア人が大量に摘発されると、乳香の流通が滞り、値段が上がるという。この小石のようなお香に、そんな裏話があるとは。ある店で乳香の値段を尋ねると、「先月から上がっている」。大きな捕物があったようだ。 (蜘手美鶴)