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バンコク 言葉無くても伝わる

2022年02月02日

 セリフの吹き出しがなく、ストーリーを追うのに集中力を要する。頭を使う分、メッセージがズシンと伝わってきた。先日立ち寄ったバンコクの美術館の「サイレントマンガ」展には、戦争や貧困、いじめをテーマにした作品が並んでいた。

 国連教育科学文化機関(ユネスコ)バンコク事務所などが企画し、アジア、欧州、南米など100カ国以上の作家から300点近くが寄せられた。日本が誇るマンガ文化で、世界に横たわる課題を伝えていく狙いという。

 「日本のアニメで育ち、今はソーシャルメディアなどで作品を発信している」と、地元タイから優秀15作品の1つに選ばれたタン・トピアさん(27)。初めてのセリフなしのマンガに苦心したというが「大勢の目に触れられる機会。国内の社会問題よりも、世界中に伝わるテーマを考えた」と解説してくれた。

 キノコ雲の絵から始まり、人類の争いのはかなさや、手を携える尊さを訴える短編は展示作品の中でも極めて難解だったが、繊細に描かれたキャラクターの表情から叫びが聞こえるようだった。思いを伝えるのに、必ずしも言葉は必要ではないと気付かされた。 (岩崎健太朗)