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米チャールストン 「負の遺産」も観光に

2022年02月07日

 「カポッカポッ」というひづめの音をさせながら、観光客を乗せた馬車が中心街を行き交う。米南部サウスカロライナ州の古都チャールストン。気温は日中20度ほどで、冬の訪れを感じさせない。フランス風建築の建物が立ち並ぶ美しい街並みで、米国内でも「異国情緒」たっぷりの有数の観光地だ。

 旧植民地時代から南部の中心都市で、かつて奴隷貿易の玄関口だった。奴隷制度を巡り内戦となった南北戦争が始まったのもここ。黒人奴隷を労働力としたプランテーションや旧奴隷市場なども今は観光名所だ。

 「南北戦争で死んだ兵士の霊が歩き回っています」。夜の馬車ツアーのガイド、マイクさんが脅かしながら乗客を楽しませていた。奴隷も内戦も暗い「負の遺産」のはずなのだが、街の歴史の一部として生かし、むしろどこか誇らしげですらある。

 米国では今、特に保守的な南部で奴隷や差別などの歴史教育の「行き過ぎ」への反対があり、社会の分断を象徴する出来事になっている。同じ問題も、地域の歴史がありとらえ方が異なる。急に冷え込んだ夜風に震えながら「文化戦争」の難しさに思いを巡らせた。 (金杉貴雄)