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ニューヨーク カンパ、多様な説得術

2022年02月16日

 ニューヨークを走る通勤電車の中では時折、いろいろな形でカンパを募る人に出会う。

 これまで最もよく見たのが「目的の駅までの運賃がない。ご支援を」と訴えるパターン。検札が始まる前に紙コップ片手に車内を巡り、目が合った乗客に頼んで回る。中には車両の先頭に立ち、「紳士淑女のみなさん、私は5つ先の駅にある病院に兄を見舞いたいのです」などと演説を始めた若い男性もいた。

 先日車内で会った中年の女性は、ある大手スーパーの名前を挙げ、「レジの仕事をしているけど、賃金が低すぎて息子を育てられない」と妙に具体的だった。友人からは「そういうのはほとんど作り話だと思うよ」と言われるが、生活に困っているのは間違いないわけで、ポケットに小銭があれば渡している。

 寄付を口実に物を売るタイプもあり、チョコレートバー1個を5ドル(約570円)で買わされたこともある。こちらの「何に対する寄付なの?」という質問への「オレにだよ」との正直すぎる返答には苦笑させられた。おかげでチョコの味までほろ苦かったが、彼らの新しい1年が良いものであることを願っている。 (杉藤貴浩)