2022年03月16日
南部テキサス州を旅行中、州都オースティンに近いフレデリックスバーグに立ち寄った。カウボーイ文化や名物のバーベキューなど、いかにも米国らしいテキサスだが、ここは19世紀に祖国の混乱を逃れたドイツ人移民が建設した街。今でも古い欧風建築やビアホールが立ち並ぶ人口1万人ほどの観光地だ。
ビアホールでは、品質に定評のあるテキサス産ワインも売っており、まさに米独が調和。ボトルを1本買い、再び街角に出ると、今度は200坪はあろうかという日本庭園が見えてきた。運転のためビールとワインの試飲は控えたので錯覚ではない。なぜここに灯籠や玉砂利が?
「提督は日本と戦ったが、トーゴーのことを生涯尊敬していたからだ」。そう教えてくれたのは、庭園の隣に立つ博物館の職員だった。太平洋戦争で米海軍を率いたニミッツ提督はフレデリックスバーグ出身。彼は日露戦争を勝利に導いた東郷平八郎に強くあこがれ、その縁で戦後の1970年代に日本の職人が渡米して造園したという。
テキサスのドイツ村で見た枯れ山水。持ち帰ったボトルを空けながら、日米独3カ国の数奇な縁を思った。 (杉藤貴浩)