2022年03月18日
北京冬季五輪でリュージュなどの競技会場となる北京市郊外の延慶区を訪れた。農家が営む民宿が点在する小さな町だが、開幕の2週間前に至って五輪のキャラクターのモニュメントをたまに見かける程度で、開催地とは思えない静けさだった。
競技場建設のために立ち退きに遭う卓さん(56)は、新築の住宅を補償される。「なかなかいい家だった」と笑みをこぼし、住環境が改善することを喜んでいた。村のトップも「五輪後に人が増えれば、雇用問題の解決になる」と期待を込めた。
一方、近くのレストランで働く馬さん(30)は内陸部の甘粛省から出稼ぎに来た女性だ。「五輪で関心のある種目は」と尋ねると「卓球は関心あるけど、他は知らない」。仕事が忙しく五輪を見る余裕はないという。
国営放送の五輪報道では、子連れでスキー場に来ていた母親が「子どもにスキーを習わせるのは愛国教育にぴったりだ」と取材に応えていた。誰もが身の回りのことに精いっぱいでウインタースポーツを楽しむ余裕はないのかもしれない。しかし、変化の早い中国。次の冬には想像を超えた変貌を遂げているかもしれない。 (白山泉)