2022年03月30日
人間が片付けや皿の補充ばかりしている。北京冬季五輪バブル内の記者が集まるメディアセンターの食堂は、ギョーザもチャーハンも野菜炒めも、作るのはロボット。どれも1000円前後と高いが、やはり味気ない。
宿泊ホテルのレストランは1人約3600円の「高級」ビュッフェ。料理は乾き、欠品も多い。客がほとんどいないので当然だが、思わずホールのウエーターに怒ってしまった。「こんなに高いのに何もない」。それでは何が食べたいのか。そう言うので焼き羊肉を指さした。20分後。分厚くて香り高い肉が出てきた。「やればできるじゃないか!」。日本から来た同僚が歓喜の声を漏らした。
ぎょろ目で小太りの料理人が奥の厨房(ちゅうぼう)から顔を出して何か言っている。「もう厨房を閉める。他に何か食べたいものはあるか?」。こう聞くウエーターに調子に乗って注文すると、本格中華を次々と出してくれた。
五輪で中国が宣伝すべきは調理ロボではなく、悠久の歴史が育てた生身の料理人だろう。惜しいことに、あの料理をもう一度食べるのは難しい。また3600円を支払い、欠品を待たなければならない。 (白山泉)