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バンコク 歩行者に優しい国へ

2022年04月07日

 バンコクでは、歩行者用信号のボタンを押すと200秒近い待ち時間が表示され、青になっても横断できる時間は10秒余りということもざら。信号に従わず、突っ込んでくる車も少なくない。「車を持てる金持ちが偉い、という意識が染み付いている」とタイの知人。バイクの逆走や歩道走りも当たり前。遅れた交通インフラにも起因するのだろう。

 ところが最近、横断歩道の前で立ち止まっていると、車が止まってくれるようになった。2度や3度ではない。歩行者に冷たく車両優先が常で、東南アジア最悪の死亡事故率のタイだけに驚く。

 交通マナー改善のきっかけは、ある事故だった。横断歩道を渡っていた将来ある女性医師が、警官のバイクにはねられ死亡。警官はそのまま逃げた。その瞬間をとらえた映像がソーシャルメディアで拡散し、速度超過や走行車線違反なども判明。非難の嵐が巻き起こった。

 以来、横断歩道を目立たせる試みや、交通巡視が各地に広がった。「どうせ一過性」という声もある。熱しやすく冷めやすいが、体面を気にするお国柄。ハンドルを握る手に刻まれることを願う。 (岩崎健太朗)