2022年04月18日
「Mind the gap」。ロンドンの地下鉄に乗ると毎度このアナウンスが聞こえてくる。ホームとの隙間にご注意ください、との意味だ。発音は「マインダギャッ」だろうか。
昨年秋に赴任して初めて聞いた時、マスクの中で思わず噴き出してしまった。なぜなら新人の頃、ロンドン帰りの大先輩から「これがよー、名古屋弁の『満員だぎゃあ』に聞こえるんだわ」とよく聞かされたからだ。
以来、再びこの「空耳」にすっかり取りつかれてしまったのだが、ある時ふと、本来の「隙間にご注意」の方を1度調べてみたくなり、市交通局に問い合わせてみた。すると、新型コロナウイルス前は年間200件台もの転落事案が起きていた。古い路線でカーブが多かったり、車いす用に新型車両で高低の段差をなくしたら逆に水平の隙間が広がったりと、大きな所では数10センチの空間があるらしい。
少し前までは在宅勤務の推奨でガラガラだった車内も、最近は政府の規制撤廃で再び「満員だぎゃあ」に戻ってきた。転落事案がまた増えるかもしれない。空耳と本来の意味の間を行ったり来たりしながら、アナウンスに注意している。 (加藤美喜)