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ソウル 防疫戦略に優劣なし

2022年04月14日

 新型コロナウイルスの変異株オミクロン株が広がる中、ソウル支局でも抗原検査キットを備えることになった。薬局ではまだ品薄感が強いが、何とか6個入りを確保。これで自己診断して陽性になった際は、保健所などでPCR検査を受ける。

 韓国は最近まで、無料のPCR検査を大量に実施していた。入国直後の外国人は、自宅での隔離を徹底しているかアプリの位置情報で確認されるほどの厳格さだった。だが感染力が強く致死率は低いオミクロン株に合わせ、市民の自主的な防疫を促しつつ、重症者対応に集中する戦略に切り替えた。

 こうした転換を提唱したソウル郊外・安城(アンソン)病院の林承寛(イムスングァン)院長に取材する機会があった。地域内の連携を深め、開業医も軽症者に対応する新体制は、何だか日本に似てきた。そう水を向けると、「私たちは医療体制が似通った日本に学ばないといけない」と返ってきた。

 政府は従来の「K防疫」を誇ってきたが、振り返ってみれば日韓どちらの対応がより優れていたとも言い難い。「状況に応じて戦略は変える必要がある。謙虚であるべきだ」と話す院長に共感した。 (木下大資)