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ソウル 後味悪い中傷ソング

2022年05月06日

 韓国で最近、某有名歌手が発表した「マイケル・ジャクソンに似た女」という歌が物議を醸した。大統領選の野党候補・尹錫悦(ユンソクヨル)氏の妻を暗示して中傷するような内容だからだ。

 今回の選挙では候補本人だけでなく配偶者の不祥事が相次いで発覚。尹氏の妻は過去の経歴詐称で謝罪するなど、何かと話題の多い人ではある。それにしても、整形手術をやゆするような歌詞はネット上で「風刺とは言えず、低俗だ」などと炎上。メディアも「表現の自由とはいえ不適切」と批判した。

 歌手は、民主化運動と関わりが深くメッセージ性の強い「民衆歌謡」というジャンルの出身。革新と保守の両陣営が激しく対立する韓国では、大統領選ともなれば、音楽家や学者も積極的に自らの旗印を鮮明にする。それ自体は悪いことではないが、スキャンダル合戦が高じて人権感覚がおろそかになるのはいただけない。

 韓国人の知人は「『人は花より美しい』と歌った歌手が、こんなふうに人を攻撃する歌を歌うなんて」とあきれた様子。私も学生時代にCDを買ったことがある歌手だけに、後味の悪さが残った。 (木下大資)