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ソウル フェミニストの憂い

2022年05月23日

 韓国の新学期は三月から始まるが、ソウルの延世大の羅任允慶(ナイムユンギョン)教授(56)の表情はさえない。「最近の学生はフェミニズムを学びに来るのでなく、攻撃してやろうと講義を聴きに来る」

 物心ついた頃からインターネットに接してきた若者世代は、男女それぞれのコミュニティーに分かれて世論を形成。女性が性被害を告発する#MeToo運動などが活発になる一方、男性はフェミニズムが「女性優遇」「男性嫌悪」とのイメージを膨らませ、攻撃対象と見なす風潮が広まっている。

 両親の姓を連ねて使う羅任教授は、昨年まで女性家族省傘下「両性平等教育振興院」で院長。市民に向けて女性を含むマイノリティーとの接し方について発信したメッセージが、ネット上で「男性は潜在的加害者だと決め付けた」と単純化されて伝わり、炎上した苦い経験を持つ。

 「若者が考える『公正』の感覚を理解して、フェミニズムの言葉遣いを彼らの文脈に合わせて翻訳する努力が必要だ」。自戒を込める教授の言葉に、大統領選にも影響した「ジェンダー葛藤」の深刻さを垣間見た。 (木下大資)