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北京 内向き思考が生む味

2022年05月27日

 北京冬季五輪の関係者専用ホテルで飲んだコーヒーが薄く、コーヒーというよりほうじ茶に近かった。レストランのスタッフの女性に「もっと濃くしてもらわないと」と言うと、「私たちは外国人が好む味覚がわからないから」と平然と答えた。

 朝食のバイキングも、味のしないチャーハンや中華のシェフが無理にアレンジした洋食など風味を欠いたメニューばかり。「外国人は薄味が好き」という偏見が基底にあるようだ。

 五輪期間中、「選手村の料理がまずいという報道がある」との質問に、組織委員会の報道官は「旧正月に出した中華が外国人選手の口に合わなかったのだろう。その後は中華を出していない」と答えた。外国人が北京に来て一番食べたいものの一つが、「地元の中華」だということを誰も知らないのだ。

 国営放送は欧米で新型コロナウイルス感染者が激増していることを連日報じている。新型コロナを必要以上に恐れ、中国人以外は受け入れないホテルも増えた。そんな北京に久々に大量の外国人が訪れたのが北京五輪だった。その舞台は、コロナ鎖国を続ける首都の内向きな思考を体現していた。 (白山泉)