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ロンドン 凍結資産の使い道は…

2022年06月02日

 ロンドンはロシアの新興財閥オリガルヒの投資マネーがはびこる街として知られ、別名「ロンドングラード」とやゆされる。先日、プーチン政権とのつながりで英政府から経済制裁を受けたサッカーの強豪クラブ、チェルシーのオーナー、ロマン・アブラモビッチ氏(55)の資産は90億ポンド(約1兆4000億円)に上り、英国だけで70軒の不動産を所有するという。

 ウィリアム王子一家が住むケンジントン宮殿のそばに、その豪邸の1つがあった。周囲は各国大使館や公邸ばかり。旧ソ連崩壊後、原油で財を築いたとされる「アブラ」モビッチ氏の政財界への影響力を実感した。

 彼が国外へ出た今、この家はどうなるのか。ケンジントン地区で海外からの不正資金の撲滅に取り組むジョー・パウエルさんは「ウクライナ避難民に開放してほしい」と訴える。地区には他にも不正資金が疑われる投資用の高級物件が6000軒あり、大半が空室なこと、一方で、公営住宅の空きを何年も待つ家庭が3000世帯いることも知った。

 「このゆがみを解消したいのです」。がらんとした白亜の豪邸を見ながら、パウエルさんの思いに共感した。 (加藤美喜)