2022年06月06日
親しくしていた友人がバンコクでの任期を終え、旅立った。住まいのあるベトナムに妻や娘を残した単身赴任で、新型コロナウイルスの拡大以降、顔を合わせられたのはスマホ画面だけ。幸い、次の任地はベトナム。見送りの空港では、2年ぶりの再会に浮足立っていたのか、振り返ることもなかった。
数日後、あるニュースが世間をにぎわせた。タイ南部プーケットの100キロほど沖合を、ゴムボートで漂流していた30代のベトナム人男性が保護された。妻のいるインド西部ムンバイを目指していたという。
2年前に結婚したが、途端に新型コロナ禍で往来が阻まれた。妻に会いたい一心で空路バンコクまで来たが、インドへの入国ビザが取得できず、ゴムボートを調達。即席麺や飲料水を積み込み、無謀にも海路2000キロをこぎ出したところだった。
救助したタイ海軍の発表の見出しは「海がどんなに広くても止められない-この男性の真実の愛」。その後、男性が妻と再会を果たせたのか、送還されてしまったのかは定かでない。友人の方は、久々の家族との時間を満喫しているのか、めっきり連絡は減った。 (岩崎健太朗)