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北京 ゼロコロナとともに

2022年07月29日

 「部屋で走るな! けがしてもすぐに病院に入れないんだから!」。家の中ではしゃぐ小学生の子どもたちを思わず強い口調で叱ってしまった。自分のストレスをぶつけただけの、理不尽な言い方だったと後悔した。

 新型コロナウイルス対策のため、小学生が北京市外に出られなくなって半年。1学期は2週間で登校できなくなり、近くの公園も封鎖された。外食まで禁じられるなど次々と楽しみが奪われ、部屋で走りたくなるのも当然だろう。とはいえ、病院の感染対策は厳しく、封鎖された別の都市では急病の子が病院にかかれずに亡くなった事例もあり、親としては不安にもなる。

 共産党の「コロナとの闘い」は間もなく2年半に及ぶ。終わりなき政治宣伝の物語は「人命至上のゼロコロナ」をうたうが、懲罰的な強制隔離を伴う厳しい行動制限が庶民に与える苦しみやストレスはつづられない。

 「不要不急の外出禁止」と政府が呼び掛ける中、子どもと出かけてみた。封鎖されていない川沿いに集い、泳ぐ人を見て気が楽になった。「ゼロコロナ」に踊らされながらも共存する術(すべ)を、この街の人々は知っていると感じたからだ。 (白山泉)