2022年08月16日

　ソウル中心部のビル９階にある支局の窓が突如、真っ赤になった。何が起きたのかと思ったら、６月１日のソウル市長選の候補の広報垂れ幕が、通りに面して設置されたのだった。

　垂れ幕は縦横が数十メートルあり、候補の写真やスローガンがでかでかとプリントされている。運悪く、赤く染め抜かれた背景部分が支局の窓を覆ってしまった。室内に差し込む光が赤く染まり、同僚は「頭がおかしくなりそうだ」と嘆いた。

　ビルの一角に選挙事務所が入居し、垂れ幕設置の要請を管理者が断れなかったようだ。複数の報道機関が入る建物だが、規制は特にないという。

　ところが、強風にあおられて破損し、いったん撤去。縦幅をぐっと縮めた横長の横断幕に替わった。今度は支局の窓の上半分が遮られる程度。しかし同僚と安堵（あんど）したのもつかの間、次の週には、破れないよう頑丈に改良された巨大な垂れ幕が戻ってきて、窓は再び覆われた。

　入居者の不便をかえりみず、事前の計画が周到とも言い難いが、問題が生じれば素早く修正していく。そのスピード感が、いかにも韓国らしい。　（木下大資）