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ロンドン 太陽の恵みと悩みと

2022年08月19日

 「これから夕飯どうですか」。知人からメッセージが来て、「あれ、もうそんな時間?」と驚いた。ロンドンは今、すっかり日が伸びて、夕方でも真昼のように明るい。日没は夜9時すぎだ。職場にいると、つい退勤の感覚を忘れてしまう。

 気温の感覚などから当地は北海道くらいの緯度かと思い込んでいた。地図を見ると、サハリン(樺太)の中北部と同じ。逆に北海道は南仏やスペイン北部辺りで、改めて暖流と偏西風がもたらす気候の差に驚く。

 昨年秋に赴任してすぐ、長く暗く鬱々(うつうつ)とした冬を経験しただけに、今の雰囲気はまるで別世界のよう。店や通りには花があふれ、人々の服装や表情も一気に明るくなり、パブの外は人だかりで通れないほど。新型コロナウイルスの行動規制が完全に撤廃され、女王の在位70年の祝賀ムードとも相まって、人々は人生を謳歌(おうか)している感じだ。

 今のうちとばかりに、なるべく外に出て日光を浴びるようにしているが、最近どうも肌がヒリヒリするのに気づいた。紫外線と乾燥のせいだろうか。目尻のしわとにらめっこしながら、太陽との付き合いも難しいなと実感している。 (加藤美喜)