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タイ・カンチャナブリ 薄れゆく 大戦の記憶

2023年03月01日

 第二次大戦中、旧日本軍がタイとビルマ(現ミャンマー)間に建設した全長415キロの泰緬(たいめん)鉄道。建設には、英国やオランダなど連合国軍の捕虜やアジア人が動員され、多くがマラリアや過酷な労働で命を落としたとされる。「死の鉄道」と呼ばれたゆえんである。

 取材でミャンマーとの国境へ向かう途中、タイ西部カンチャナブリ県にある、泰緬鉄道を扱った映画「戦場にかける橋」で描かれたクワイ川鉄橋と、JEATH戦争博物館に立ち寄った。週末とあって、鉄橋では多くの観光客らが詰めかけ、記念撮影に興じていた。中にはタキシードと純白のドレスでウエディング・フォトを撮っているカップルの姿も。すっかり観光スポットと化し、「死の鉄道」の面影は、そこにはなかった。

 一方、鉄道建設に従事した戦争捕虜などに関する展示を行う博物館には、人影がまばら。館内を1人で回っていた白人女性に「泰緬鉄道の歴史を知っている?」と尋ねてみた。フランスからの旅行者で、ガイドブックを見て訪れたといい、「概要だけ。詳しくは知らない」。先の大戦の記憶は、少しずつ薄れている。 (藤川大樹)