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北京 一生涯知らぬままで

2023年03月03日

 「ゼロコロナ」の抑圧された生活が長く続き、些細(ささい)なことに喜びや感動を覚え、踊らされやすくなってきた気がしている。

 厳しい防疫対策が故に出張先から北京に帰れない人が続出し、市外に1歩も安心して出られない「監獄生活」が続いた。そこに「外地から帰れない人を救済する」とのニュースが流れたときには、肩凝りが幾分和らいだ。普段、いかに緊張した状態で生活しているかを実感した。

 「水際の隔離を10日から8日に短縮する」とのニュースに北京でも多くの人が沸き立った。入国者や濃厚接触者がウイルス扱いされ、部屋から1歩も出られない措置は続いている。それでも政府が何か慈悲深い存在に見えてくるから不思議だ。イチョウの黄葉もなぜかいつもより美しく見えてくる。

 3歳児が新型コロナウイルス対策のために病院に行けず亡くなるニュースがあった。中国の知人は悲痛な表情で「ゼロコロナの生活が始まって間もなく3年。あの子はこの抑圧された世界しか知らずに死んでしまった」と悼んだ。彼が生涯見ることのできなかった正常な世界とはどんなものだったのか、忘れないようにしたい。 (白山泉)