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トランスイート四季島

トランスイート四季島 東京・上野駅発着 走るホテル 心遣い堪能

(上)乗車は5号車の「ラウンジこもれび」から。下車して観光した後も車掌とトレインマネジャーが笑顔でお出迎え=福島県の会津若松駅で(下)全15室あるスイート。夜はソファがベッドに。トレインクルーが部屋まで案内してくれる

 旅は出発地の東京・上野駅の専用サロンでクルーのあいさつを受けるところから始まった。午前8時15分、JR東日本が誇る、シャンパンゴールドの車体の「トランスイート四季島」が入線してきた。乗客は1組ずつクルーの先導で専用ホームを歩き、10両編成の5号車、その名も「ラウンジこもれび」という車両の乗降口から車内へ。光が差し込む大きな窓、濃い青のソファ。ピアノの生演奏。ここは本当に列車の中なのか。

 客室は17室。各1室の「四季島スイート」と「デラックススイート」はひのき風呂付き。残り15室はソファベッドとトイレ、シャワー付きの「スイート」。走るホテルなのだ。

 午前9時15分、スタッフに見送られ、中央線、篠ノ井線、磐越西線などを行く「山梨、福島をめぐる1泊2日コース」へと列車が動きだした。「風景と工芸品の粋(すい)」という旅のテーマが設定され、それに沿った下車しての観光がある。

 四季島には他に「東北・北海道をめぐる3泊4日コース」「冬季限定の東北2泊3日コース」があり、食事、観光込みのツアー(旅行商品)として販売されている。1泊2日コースは32万~45万円(2人1室で1人当たり料金)。希望者多数の場合は抽選。デビュー2年後の今でも倍率は3~6倍というから、人気ぶりに驚く。

 四季島では今年4月、シェフ(総料理長)に元東京ステーションホテル副総料理長の佐藤滋さん(47)が就任。佐藤シェフのデビュー前に行われた1泊2日コースの訓練運転を取材させてもらった。

 ラウンジには乗客が自由に読み書きできる「メモリアルブック」が備えられていた。それを読み、結婚30周年記念の夫婦が多いことが分かり納得。夫や子どもからプレゼントされた感激が文字から伝わってきた。

 調理室では佐藤シェフの訓練が始まっていた。フランスのレストランやJR系列のホテルなどで修業を重ねた。四季島の総料理長を打診されたのは1年前という。「引き受けるにあたって重圧もありましたが、地域の食材と生産者に寄り添う四季島のスタンスを大切に、料理から旅を感じられるようなストーリー性のあるメニューを作りたい」と語った。

四季島の調理室でディナーを仕上げる佐藤シェフ

四季島の調理室でディナーを仕上げる佐藤シェフ

 訓練運転なので、東北・北海道コースのメニューが提供された。メインの宮城県石巻市産のアンチョビーをのせた仙台牛のステーキをはじめ、どの皿にも東北の恵みが詰まっていた。

 初日は中央線・塩山(えんざん)駅(山梨県甲州市)で下車し、ソムリエの案内で甲州ワインの歴史を学び、その味を堪能した。

 夜は「日本3大車窓」の1つと称される篠ノ井線・姨捨(おばすて)駅(長野県千曲(ちくま)市)に停車、高台に位置する同駅の専用サロンから、眼下に広がる善光寺平(ぜんこうじだいら)の夜景を眺めた。日付が変わるころ、ガタンゴトンという音を子守歌に眠りに落ちた。

 2日目は磐越西線・喜多方駅(福島県喜多方市)で下車、専用バスで会津若松市に移動し、名産のわっぱめしの朝食をいただいた後、漆器店・鈴善で蒔絵(まきえ)の絵付けを体験。「漆器の魅力は木のぬくもり。420年の歴史があります」と話す伝統工芸士・中村光彩さんに手伝ってもらい、自分だけのタンブラーが完成した。

 上野到着は午後5時前。最後のイベントのために再び専用サロンへ。同行カメラマンが撮影した写真をスライド上映しながら、旅の余韻にひたるサヨナラパーティーだ。上映されたのはサンプルで、見ず知らずの人たちの写真なのに、なぜか感動。こういった心遣いが四季島の真価だと知った旅だった。

  文・写真 宮崎美紀子

(2019年5月10日 夕刊)

メモ

地図

◆ツアー申し込み
今は年間64回のツアーを行っている。
今年出発分のツアーの募集は終了。
来年分は間もなく募集開始予定。
8~11カ月前に募集を行い、ツアー参加が決まったら4、5カ月前に手続きする。
詳細はトランスイート四季島の公式サイトで。
申し込み手順も説明されている。

◆問い合わせ
トランスイート四季島ツアーデスク=電(0570)007216
(午前10時~午後5時半、水・土曜日・年末年始休業)

おすすめ

鈴善漆器店

鈴善漆器店

★宮光園
甲州ワインの先覚者・宮崎光太郎の自宅やワイン蔵でワインの歴史や文化に関する資料を展示。
観覧料は大人200円、未成年と学生100円。
原則、火曜定休。
山梨県甲州市勝沼町下岩崎
電0553(44)0444

★ルミエールワイナリー
1885年創業のワイン醸造所。
レストラン、ショップを併設。
ブドウ畑、地下セラーの見学は60分コースが中学生以上1000円、30分コースが500円。
要予約。
山梨県笛吹市一宮町南野呂
電0553(47)0207

★鈴善漆器店
敷地内にショップ、飲食店、漆器の歴史や道具を展示する会津塗伝承蔵、絵付けの教室がある。
蒔絵体験は要予約。
福島県会津若松市中央
電0242(22)0680

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

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