【本文】

  1. トップ
  2. 旅だより
  3. 「しんぺい号」と「SL人吉」
「しんぺい号」と「SL人吉」

「しんぺい号」と「SL人吉」 鹿児島、熊本県 歴史ロマン ひた走る

球磨川を渡る「SL人吉」。展望車から大パノラマが楽しめる=熊本県八代市で

球磨川を渡る「SL人吉」。展望車から大パノラマが楽しめる=熊本県八代市で

 鹿児島空港からバスを乗り継いで、鹿児島県霧島市の嘉例川(かれいがわ)駅にやってきた。山あいの小さな無人駅は、1903(明治36)年に建てられた木造駅舎がそのまま残る。100年以上、旅人を見守ってきた駅舎が、今回の旅の出発点になるとは感慨深い。ここから2つの観光列車の乗車を楽しみながら、熊本へ向かった。

 まず肥薩線の普通列車で吉松駅(鹿児島県湧水町)へ。特急「しんぺい号」に乗り込んだ。列車は山奥をひた走り日本3大車窓の1つ、県境の峠を越える「矢岳越え」に差しかかった。霧島連山や、遠く鹿児島市の桜島まで見渡せる。絶景ポイントで停車のサービスがあり、乗客は一斉にシャッターを切った。

 峠を越えて熊本県に入り、このあたりの鉄道旅のハイライトである大畑(おこば)駅(人吉市)で下車した。この駅は周囲を山に囲まれ、線路は山越えの急勾配を上り下りするため、山を一回りしてゆっくり走る「ループ線」を採用し、さらに進行方向を変えながらZ字を描くように走る「スイッチバック」も併用している。当時の技術者たちの苦労がうかがえる。同駅も明治時代に建てられた駅舎が残る。

 ちょうどお昼だったので、駅構内にある旧保線詰所(つめしょ)をリノベーションした「大畑駅レストラン囲炉裏(いろり)キュイジーヌLOOP」でランチにした。木材を多用し落ち着いた雰囲気。熊本産の黒毛和牛のステーキや、地元の野菜の料理に舌鼓を打った。

現役最古のSL「8620形」=同県人吉市の人吉駅で

現役最古のSL「8620形」=同県人吉市の人吉駅で

 人吉駅に出て、人気の「SL人吉」で一路、熊本駅へ。球磨(くま)川に沿った険しい地形の中を、大正時代に製造された現役最古のSL「8620形」が汽笛とともに勇ましく突き進む。客車の最後尾は展望室となっており、窓いっぱいに雄大な自然を楽しむことができた。

 家族で乗っていた同県八代市の男性(48)は「SL列車に乗るのは初めて。子どもたちは鉄道が好きで、いつもこの人吉号に手を振り見送っていた。今回、見送られる側になれて良かった。いい思い出を作ってほしい」と目を細めていた。

 流れゆく車窓を眺めること約2時間半、列車は終着の熊本駅に到着し、この日は熊本市内のホテルに宿泊した。

 2日目。熊本県北部に位置する山鹿市へ向かい、明治時代に建てられた芝居小屋「八千代座」を見学。建築当時の雰囲気を色濃く残しており、板張りの床や升席は歩くたびに、キュッキュッと音をたてる。

 100年以上前から続く風情を味わっていると、幕が開き郷土芸能の山鹿灯籠踊りが始まった。「祭りやお酒にお酔いなさいよ、ほら」の意味を持つ「よへほー」という掛け声が響き渡り耳に残った。

金栗四三ミュージアムに展示されている金栗足袋をモチーフにしたソファ。中に足を入れて記念撮影ができる=同県和水町で

金栗四三ミュージアムに展示されている金栗足袋をモチーフにしたソファ。中に足を入れて記念撮影ができる=同県和水町で

 旅もいよいよ終盤。放送中のNHK大河ドラマの主人公で、日本人として初めてオリンピックに出場した金栗四三の出身地、和水(なごみ)町へ足を運んだ。町では「大河ドラマいだてん和水町推進協議会」が組織され、「金栗四三ミュージアム」がオープン、実際に着用した足袋やユニホームなどが展示されていた。開幕を約1年後に控えた東京五輪に向け、日本の五輪の歴史を学ぶ機会となった。近くにある生家も公開されている。

 初日、熊本市で泊まったホテルは熊本城の目の前。2016年4月に発生した熊本地震から3年が経過した。天守の2階以上の外観修復作業が今年2月に終わり、雄姿を取り戻しつつある。とはいえ、完全な復興への道のりはまだ長い。完全な復興へ向け、ひた走る熊本にさらなるエールを送りたい。「がまだせ(頑張れ)! 熊本!」

 文・写真 芹沢純生

(2019年6月7日 夕刊)

メモ

地図

地図
「しんぺい号」

「しんぺい号」

◆交通
東京(羽田空港)、名古屋(愛知県営名古屋空港、中部国際空港)から、熊本空港、鹿児島空港へ定期便が飛んでいる。
「しんぺい号」は毎日、「SL人吉」は金土日祝日を中心に運転。

◆問い合わせ
観光列車は、JR九州案内センター=電050(3786)1717。
金栗四三関連は大河ドラマいだてん和水町推進協議会=電0968(86)5725

おすすめ

大畑駅レストラン囲炉裏キュイジーヌLOOP

大畑駅レストラン囲炉裏キュイジーヌLOOP

★金栗四三ミュージアム
日本マラソンの父、金栗四三の生い立ちや競技人生、引退後の功績などが学べる。
来年1月13日まで。無休。
大人(高校生以上)600円、小中学生300円。
詳細は公式ホームページで。
電0968(34)4300。
生家までは車で約10分。

★大畑駅レストラン囲炉裏キュイジーヌLOOP
旬の地元野菜や熊本産黒毛和牛を使用したフレンチが楽しめる。
車の場合は、九州道人吉ICから約15分。
水曜日定休。
電0966(23)1003

★肥後よかモン市場
熊本市のJR熊本駅改札正面に位置する商業施設。
物販店、飲食店など60店舗が入る。
熊本の銘菓、名産、お土産などがそろうほか、熊本ラーメンなどご当地グルメも。
営業時間は一部店舗を除き、物販店午前8時~午後9時、飲食店午前11時~午後11時。
詳細は同市場のホームページで。

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

旅コラム
国内
海外