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士別、美深、稚内

士別、美深、稚内 北海道 北の大地 羊と触れ合い

「羊と雲の丘」で開催されているシープドッグショー=北海道士別市で

「羊と雲の丘」で開催されているシープドッグショー=北海道士別市で

 四方の遠い山並みを見渡せる牧草地帯を吹き抜ける風が心地よい。北海道士別市の観光施設「羊と雲の丘」。空路で旭川空港に降り立ち、列車、バスを乗り継いできた。施設内の「世界のめん羊館」には英国、ロシア、オーストラリアなどが原産の30種ほどの綿羊がいる。同館の牧舎では、子羊が乳を「もっと」と母羊にせがんでいた。かわいらしい姿に似合わず、母羊の体を頭で突き上げる意外なワイルドさ。子羊の横にいた羊から「ゥメェー?」と合いの手が入り、笑いがこみあげてきた。

 緩やかな斜面の牧草地では、シープドッグショーも。主役は2歳の雌犬、ボーダーコリーのサラ。飼育スタッフの住友健太さん(25)が「英語と犬笛と、ぼっこ(北海道弁で棒の意味)を振って、サラを走らせます」と説明。「ピッピー」という犬笛の音で、サラが斜面を駆け上がっていった。丘の上の牧舎に入って、30頭ほどの羊を外に出す。羊の群れの周りを右に左にと回りながら、私たちの前に誘導してくれた。サラはショーに出始めてまだ2年目。今後の成長が楽しみだ。

 柵の中に入って羊と触れ合えるはずが、人間たちが近づこうとすると、さっさと牧舎へ帰ってしまった。この日は日曜日。羊も時短勤務ということか。

 名寄市内に泊まり、翌日、さらに北へ向かった。

本物のレールの上を走る体験ができる「トロッコ王国美深」=北海道美深町で

本物のレールの上を走る体験ができる「トロッコ王国美深」=北海道美深町で

 国鉄時代に「日本一の赤字ローカル線」といわれた美幸(びこう)線。内陸の美深(びふか)駅(北海道美深町)とオホーツク海沿岸の北見枝幸(えさし)駅(北海道枝幸町)を結ぶ計画だったが、全線開通前の1985(昭和60)年に廃線になった。残されたレールの一部を利用して、NPO法人「トロッコ王国美深」が観光トロッコを走らせている。最高速度が時速20キロのエンジン付きトロッコを客が運転し、往復10キロの本物のレールを走る。

 線路脇にはシラカバやミズバショウが群生。途中6カ所の踏切は自動車優先で、トロッコが停車するのが王国のルールだ。広報管理部長の岩崎泰好さん(69)によると、国内各地の鉄道ファンや家族連れはもちろん、最近は台湾や香港からの客も増えたという。「トロッコは全部自分たちで作って、2人乗りから9人乗りまで19台。製作費は1台70万~80万円くらい」

 経営のほうは「4年前くらいから黒字転換しました」と聞きひと安心。廃線から30年かけて黒字化を達成した皆さんの努力に頭が下がった。

ホタテガイの貝殻を敷き詰めた白い道=北海道稚内市で

ホタテガイの貝殻を敷き詰めた白い道=北海道稚内市で

 北方領土を除き日本最北の稚内(わっかない)市は「日本のてっぺん」を名乗る。宗谷岬の有名な「日本最北端の地の碑」の南側は、黒牛の牧草地が広がる宗谷丘陵だ。エゾシカも草を食(は)む丘陵をバスに揺られて上っていくと、遠くに風力発電の真っ白な風車群が見えてきた。その数なんと57基。

 市観光交流課の梅津延衣(のぶえ)さん(41)は「『宗谷岬ウインドファーム』の発電能力は5万7000キロワット。市内には全部で84基の風車があり、総発電力は10万キロワット以上。市の電力需要の120%になります」と教えてくれた。

 さらに坂道を上ると、白い道が現れた。地元産ホタテガイの貝殻は産業廃棄物だったが、市職員のアイデアで、2011年に貝殻を砕いてきれいにし、全長3キロに敷き詰めた。海に向かって延びる白い道と緩やかな丘の緑、空の青、海の濃紺。このコントラストはSNS映えしそうだ。左手には利尻富士(利尻島)と礼文島、右手にサハリン(樺太)が見えた。

 風力発電を進め、廃棄物を観光資源に変えた稚内は、エコのてっぺんと言えそうだ。

 文・写真 塚原啓輔

(2019年月7月19日 夕刊)

メモ

地図

地図

◆交通
東京(羽田空港)、名古屋(中部国際空港)から旭川空港へ定期便がある。
JR旭川駅から特急に乗り、約40分で士別駅、約1時間15分で美深駅、約3時間40分で稚内駅へ。
羽田空港からは稚内空港へも定期便が飛んでいる。

◆問い合わせ
世界のめん羊館=電0165(23)1582。
トロッコ王国美深=電01656(2)1065。
稚内市観光交流課=電0162(23)6468

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★SL「キマロキ」編成
全国で名寄市だけに現存する排雪用編成列車。
機関車(キ)、雪をかき集めるマックレー車(マ)、集めた雪を吹き飛ばすロータリー車(ロ)、これらを後押しする機関車(キ)の頭文字をとった。
10月中旬~4月下旬は雪害防止のためビニールシートで囲まれ、見学できない。
キマロキ保存会事務局(名寄市北国博物館)=電01654(3)2575

★天塩(てしお)川カヌー下り
名寄市から河口まで約160キロをカヌーで下ることもできる。
初心者向け5キロのコースは大人5000円、小学生以下2500円。
コスモスカヌー企画=電090(7055)2775

★びふか温泉
美深町にある温泉宿泊施設。
施設内のチョウザメ館では、養殖している幼魚から成魚までの成長過程を展示。
レストランではチョウザメの身(肉)を使った天丼、照り焼き丼などが食べられる。
電01656(2)2900

※掲載された文章および写真、住所などは取材時のものです。あらかじめご了承ください。

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