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美咲・美作・津山

美咲・美作・津山 岡山県 昭和の鉄道風景に感激

展示運転されるキハ303が出発を待つ。今では少なくなった構内踏切も懐かしい=岡山県美咲町の柵原ふれあい鉱山公園で

展示運転されるキハ303が出発を待つ。今では少なくなった構内踏切も懐かしい=岡山県美咲町の柵原ふれあい鉱山公園で

 新幹線からローカル線に乗り継いだ。その先に、懐かしい風景が広がっていた。

 岡山県美咲(みさき)町へ、小豆色とクリーム色のディーゼルカーに会いに来た。1991年に廃線になった同和鉱業片上鉄道の旧吉ケ原(きちがはら)駅周辺を活用した「柵原(やなはら)ふれあい鉱山公園」。機関車や客車、貨車、人を乗せるエンジン付きの気動車が計12両、うち9両は動かせる状態で保存されている。在りし日の光景を後世に残そうと、全国の有志でつくる「片上鉄道保存会」が、毎月第1日曜日の午前10時~午後3時すぎに展示運転を実施。300円で「1日会員」になれば、400メートルの区間を行ったり来たりする列車に、何度でも乗ることができる。ということで、8月4日の展示運転に訪れた。

 吉ケ原駅10時35分発の黄福(こうふく)柵原駅行きの気動車「キハ303」に乗る。1両編成の車内は家族連れやカメラを構える鉄道好きの人であふれている。昔の単線区間でよく見られた、輪の形をした通行手形(タブレット)が運転士に渡される。車外に目をやると、会員たちがあちこちで安全確認のための小旗を振っていた。車内では女性会員が切符の拝見のごとく「1日会員証」の確認を求める。「懐かしい風景をお楽しみください」といった車内放送もあった。

緑色が映える山を背景に、水田の脇を走る気動車=美咲町で

緑色が映える山を背景に、水田の脇を走る気動車=美咲町で

 「プオーン」という警笛、ブルブルというエンジン音が響き、振動も伝わる。エアコンなどない。「動いたよ」と興奮気味の子どもたち。車窓には田畑や集落が広がり、日本の経済成長を支えた鉱山住宅が残る。この地域では硫化鉄鉱が産出され、海岸部へ運ぶのが鉄道の役目だった。貨物列車が主役で、ダイヤの合間を縫うように人を乗せる気動車が走っていた。

 実は私、30数年前の高校時代の春休みに、この地を訪れた。本の世界でしか知らなかった貨物と客車の混合列車に偶然乗車。その感激が鉄道マニアへの道を決定付けたのだった。

 発車から2分で黄福柵原駅に到着。保存会代表の甲本康則さん(58)と会った。「鉄道が元気だった頃へのタイムマシンだと思うんですよ。年配の人が昔を思い出して孫を連れ出し、孫は珍しがって面白がる。車両を少しでも長く動かしてあげられれば」と語ってくれた。

 月に一度の懐かしい昭和の鉄道の再現。地元の人たちも、カレーライスや弁当などを手作りして盛り上げる。活動がいつまでも続くように願う。

山や農村など懐かしい風景のジオラマの中を、鉄道模型が走るのが楽しめる=同県美作市の湯郷温泉てつどう模型館&レトロおもちゃ館で

山や農村など懐かしい風景のジオラマの中を、鉄道模型が走るのが楽しめる=同県美作市の湯郷温泉てつどう模型館&レトロおもちゃ館で

 車なら20分ほどの同県美作(みまさか)市の湯郷(ゆのごう)温泉へ行く。湯を浴びる前に、温泉街の一角にある「湯郷温泉てつどう模型館&レトロおもちゃ館」に立ち寄る。

 400円(小学生は150円)で硬券切符を購入すれば、非日常の世界を体感できる。パチンコ店だった建物を、京都の大学生たちが温泉街の活性化を目的に変身させた。山や農村の風景などを表現した大きなジオラマの中を本物そっくりの鉄道模型が走る。館内のショーケースにはミニカー、メンコ、キャラクター人形、戦艦やゼロ戦のプラモデルなどが並び、子どもたち、いや大人にとっても天国だ。

 地元の旅館協同組合が管理し、館長は元金融マンの永谷義人さん(69)。おもちゃの説明をしながら、笑顔の子どもたちを優しく見守る。「楽しい思いをした親子がまた来てくれる。人と人のつながりができて楽しい」。懐かしいおもちゃと、ほほ笑ましい光景に、ほっこりしたところで、湯船につかって汗を流すとしよう。

 文・写真 村瀬力

(2019年9月6日 夕刊)

メモ

◆交通
柵原ふれあい鉱山公園へは、岡山駅からJR津山線で津山駅まで行き、
バス(本数は少ない)で35分の「吉ケ原」下車。
車は中国道・美作ICから30分強。
湯郷温泉へはJR姫新線の林野駅からバスかタクシーで8分。

◆問い合わせ
片上鉄道保存会の活動の詳細はホームページで。
湯郷温泉てつどう模型館&レトロおもちゃ館=電0868(72)0061

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入館料は300円(小中学生100円、幼児は無料)。
月曜(祝日の場合、翌日)休み。
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