ジャンル・エリア : 静岡 2011年02月17日

熱海後楽園ホテルにあるモザイクタイル壁画「娘と犬」=熱海市で
大阪万博のシンボル「太陽の塔」や巨大壁画「明日の神話」などの作品で知られる芸術家岡本太郎(1911~96)。生前、毎年のように伊豆を訪れ、自然から英気を養い、既成の権威や世間の常識に挑み続けた。26日は岡本の生誕100年。型にはまらない生き方や考え方が今、あらためて注目を集める岡本が伊豆各地に残した足跡を訪ねた。 (熱海通信局・水野誠)
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岡本が亡くなる数年前まで定宿にしていた伊豆天城吉奈温泉(伊豆市)の旅館「御宿さか屋」。1954年、三島市で開かれた岡本の講演会を聴きにいった先代当主の故城所真一さんが、親しい画家と一緒に岡本を連れてきてそのまま泊まることになったのが最初だった。
真一さんを「おやじ」と呼び、真一さん没後も3男で現当主の大和さん(68)や女将(おかみ)の美弥公(みやこ)さん夫妻らと交流を続けた。大阪万博があった70年の暮れには、スタッフ40人と打ち上げの忘年会を開いた。
岡本が宿泊するようになったころは、しもた屋風の木造旅館だったが、わらぶき屋根の入り口を撤去したり、近代的な建物に改修した。すると「これ以上、新しくするなと怒られました」と美弥公さん。
館内には岡本がデザインしたひょうたん形の「太郎さん風呂」があり、岡本太郎ギャラリーなどには寄贈された絵画、リトグラフなど約50点が並ぶ。
岡本は旅館や周囲の自然について「景色も庭も押し付けがましくないところが良い。奇抜なものは最初感動してもすぐ飽きる」と話したという。酒を飲んだ時にはピアノを弾きながらフランス語でシャンソンを歌うこともあった。
万博前の脂が乗りきった60年代後半には、伊豆の国市の遊園地「日通伊豆富士見ランド」(現在は廃園)に高さ6.3メートルの彫刻につるした「太陽の鐘」、西伊豆町の堂ケ島温泉ホテルにも壁画「日の誕生」など2点を制作。
熱海市の熱海後楽園ホテルには、東京の系列施設から移設されたモザイクタイル壁画「娘と犬」が展示されている。
熱海市を拠点に絵画や版画だけでなく、彫刻、陶芸、書など幅広い万能型アーティストとして活躍した池田満寿夫(1934~97)との交流も深かった。池田がまだ無名だった昭和30年代前半、東京・新宿で似顔絵描きをしていたころ、飲み仲間として岡本と知り合った。
池田のパートナーでバイオリニスト佐藤陽子さんは「(岡本は)池田にとってスターで、憧れを持っていました」という。