ジャンル・エリア : 石川 2012年06月06日

展示している小説を紹介する伊藤館長=白山市呉竹文庫で
8日から白山・呉竹文庫
明治から大正期に活躍した旧美川町の実業家熊田源太郎が集めた書物や古文書を所蔵している白山市湊町の呉竹文庫で、8日から夏季展「近代小説展」が始まる。伊藤博一館長は「私設図書館として蔵書を公開し、一般市民にも本を貸し出していた熊田について知ってほしい」と話している。(高橋貴仁)
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今回の展示は、明治から昭和初期にかけて出版された小説21点を並べた。目玉は1918(大正7)年に岩波書店から発行された非売品の漱石全集と、同じく非売品で新潮社の創立者である佐藤義亮が23年に発行した鴎外全集。熊田の知識欲の深さがうかがえるとともに、貴重な史料として人気を呼びそうだ。
37年に新潮社から発行された島崎藤村の「夜明け前」や27年の岩波文庫「五重塔」など、名作をそろえた。どれも紙の酸化が進み劣化が激しいが、歴史の重みを感じさせる。
展示されていないものの、貸し出し台帳には一般市民が小説を借りた記録もあるという。伊藤館長は「小説の内容は現代版を読んでもらい、展示では当時としては珍しく私設図書館として蔵書を貸し出した熊田の業績を感じてほしい」と話している。
午前9時から午後5時まで開館。月曜休館。