ジャンル・エリア : まちおこし | 静岡 2015年10月01日

手回しオルガンの魅力を伝える山本耕三さん(右)と後藤洋さん(左から3人目)=静岡市葵区呉服町で
地元の名曲で静岡のまちを歩く人の心を癒やそうと、静岡市葵区の商店街「呉六(ごろく)名店街」で手回しオルガンを奏でる人たちがいる。ともに半世紀以上、名店街で衣料品店を営む山本耕三さん(75)と後藤洋さん(65)。商店街に活気を取り戻したいと毎週日曜に演奏会を開いている。
(歌詞)あれは水車のまわる音 耳を澄ましてお聞きなさい コトコトコットン
欧州の風景が描かれた木箱から童謡「森の水車」のメロディーが流れると、集まった人々が懐かしそうに歌詞を口ずさんだ。浜松市出身の清水みのる(1903~79年)が作詞した一曲。買い物の途中で足を止めた女性(70)は「優しい音色に癒やされるわ」とほほ笑んだ。
2人が演奏を始めたのは昨年12月。郊外の大型店出店などの影響で商店街の通行量が最盛期の65年に比べて3分の1の2万3000人に落ち込み、危機感を抱いたためだ。
目を付けたのは、土日祝日の午後1~6時に実施される歩行者天国。車が通行禁止になる時間に「街歩きを楽しんでほしい」と音楽の演奏を思い付いた。2人とも歌は歌えず、楽器も不得意。悩んだ末に行き着いたのが、ハンドルを回すだけで曲が流れる手回しオルガンだった。
山本さんが貯金をはたき、ドイツから新品を150万円で輸入。曲のリズムに合わせてハンドルの回転に緩急を付けるのは難しかったが、毎日のように練習して腕を上げた。曲のレパートリーは現在25曲。「富士の山」など日本の童謡7曲の楽譜は特注した。「世界で聴けるのはここだけ」と山本さんは話す。
オルガンの聴き手の多くはベンチで足を休めたり、立ち話を楽しんだりしながらゆったりと過ごしている。2人は「これが商店街の良さ。オルガンの音色も魅力の一つになればうれしい」と願っている。
演奏は午後2時半~4時半ごろ。雨天中止。問い合わせは、名店街の小物店ちぐさ=電054(252)6793=へ。
(松野穂波)