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【石川】伝統の塩づくりに挑戦 石川県珠洲市

ジャンル・エリア : 文化 | 歴史 | 石川 | 自然  2018年08月02日

塩田で潮まきをする道下翔太君(左)と登谷良一さん

塩田で潮まきをする道下翔太君(左)と登谷良一さん

熟練の潮まきに脱帽

 石川県珠洲市の道の駅すず塩田村では、昔ながらの揚げ浜式塩田で塩づくりが体験できる。家族連れに交じって挑戦してみた。

 塩づくりは大きく分けても十工程以上あり、今回参加した2時間コースでは、その一部が体験できる。岩礁帯が続く海岸沿いにある塩田村。各地で記録的な暑さが続いていたが、ここは潮風が吹いてさわやかだ。

 素足で広さ50坪の塩田に入ると、さらさらとした砂が心地よい。まず、グラウンドをならすトンボのような木製の器具を使って朝にまいた海水を含んだ砂を中央に集める。さらにスコップのような器具で、木製の箱に入れる。

 続いて海水くみだ。すぐ横の海岸に降りて、潮だまりで、二つのおけに海水を入れ、それを肩荷棒にかけて、えっちら、おっちらと運ぶ。いっぱいにくむと80キロの重さになる。金沢市の道下佳孝さん(40)親子も必死で運んでいる。小学2年の翔太君は顔をゆがめながら塩田を往復している。1回まくのに600リットル必要と聞くと、立ちくらみがした。

 ある程度、海水がたまったら、いよいよ、潮まきだ。翔太君が豪快にまきはじめると、塩づくりの責任者でもある浜士(はまじ)の登谷良一さん(70)が現れた。「潮くみ3年。潮まき10年。扇状にまんべんなくまくのが基本だよ」とアドバイスしてくれた。登谷さんのまいた海水は霧状で弧を描きながら塩田に降り注ぐ。熟練の技に見とれていると、こちらの番になった。打桶(おちょけ)になみなみと海水入れてまいたら、塩田は土砂降りの後のようになってしまった。

釜たきするとソフトボール大の塩の塊が現れた=いずれも石川県珠洲市の道の駅すず塩田村で

釜たきするとソフトボール大の塩の塊が現れた=いずれも石川県珠洲市の道の駅すず塩田村で

 二つ塩田の間には、かやぶき屋根の釜屋があり、釜たきが行われていた。中に入ると煙と熱気で、涙と汗が止まらない。直径2メートルの釜に白いソフトボール大ほどの塩の塊が生き物ようにうごめく。塩づくりで最も難しいといわれる釜たきの最終段階だった。この日は火入れから完成まで14時間の予定だったが、火加減が難しいという。真剣な表情の登谷さんは「この後、八重桜、とんがり帽子のような形に変わるんだよ」と話していた。

 道下さんらと外に出ると、サウナから出たような爽快感だった。でき上がった塩をお土産に道下さんは「息子の夏休みの自由研究は塩にしようかな」と話していた。こちらは、持ち帰った塩をアユの塩焼きに使ってみた。身の甘みが引き立つような味わいだった。

 (柳沢研二)

 ▼ガイド 道の駅すず塩田村は11月まで午前8時半~午後5時半。店舗では塩田でつくられた揚げ浜塩や塩ラムネなど、さまざまな商品が並ぶ。この時期は塩ソフト300円が一番人気。資料館(有料)もある。年中無休。塩づくり体験は9月30日までで、2時間の体験コース(午後1時半~3時半)は大人2000円、子ども1000円。要予約。天候による中止あり。奥能登塩田村(電)0768(87)2040

(中日新聞夕刊 2018年8月2日掲載)