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【愛知】「金魚絵師」深堀さんが作品展 刈谷市美術館

ジャンル・エリア : 展示 | 愛知 | 芸術  2018年10月11日

樹脂の中を泳ぐように描かれた金魚=刈谷市美術館で

樹脂の中を泳ぐように描かれた金魚=刈谷市美術館で

 「金魚絵師」として注目され、透明な樹脂にアクリル絵の具で描く手法で知られる美術作家・深堀隆介さん(45)=横浜市=の作品展が、刈谷市美術館で開かれている。11月4日まで。県内の公立美術館で初の個展で、樹脂が形作る“水中”を精巧な金魚が舞うように泳ぐ作品を中心に、計200点が並ぶ。

 深堀さんは名古屋市出身で、県立芸術大でデザインを学び、ディスプレー会社で勤務後に作家として独立。2000年ごろ、スランプに陥り創作をやめようと思った時、たまたま飼っていた金魚に心奪われた。「黒く汚れた水槽の水の中に赤い背が見え、きれいで背筋がぞくぞくした。作るべきアートの答えがこんなに近くにあったのかと、後悔さえした」。以降、金魚を描き始めた。

 その2年後、容器に透明樹脂を流し込み、表面にアクリル絵の具で金魚のひれや胴などを描く工程を何層にもわたり繰り返す技法を考案。平面絵画とも、立体作品とも呼べるような「2・5D」の表現を確立した。

 個展では、升やおけをはじめ、机の引き出しや東日本大震災の津波で亡くなった子どもの上履きの中にも金魚が泳ぐ。親交のあったさくらももこさん=8月に死去=が手掛けたおちょこに泳がせた作品もある。来場者たちは、一見立体的なのに、しゃがんだり横から見たりすると姿を消す、はかなげな魚とその影に見とれていた。

 さかさの傘の中やタイルのくぼみに金魚がいるなどする「インスタレーション」(空間芸術)も。中でも「平成しんちう屋」は今回の目玉といえる新作だ。江戸時代に東京・不忍池にあった日本最古とされる金魚屋から着想し、魚群が躍動する木箱やつるされた金魚袋が広さ100平方メートルの暗い展示室いっぱいに広がる。

 深堀さんは「金魚はどこにでもいる安価な魚と思われがちだが、日本の文化の象徴で、美、はかなさ、哀愁がある。めでてきた歴史を再発見し、身近な金魚を通してアートに興味を持ってもらえたら」と話した。

 入場料は一般900円、学生700円。中学生以下無料。月曜休館。13日には、午前10時半~正午に深堀さんによるトーク、午後2時から公開制作がある。(問)市美術館=0566(23)1636 

 (神谷慶)