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【富山】ぬくもりある不動明王 大岩山日石寺

ジャンル・エリア : グルメ | 富山 | | 神社・仏閣 | 自然  2018年11月01日

大岩に彫られた大岩山日石寺の高さ3メートル余の不動明王像

大岩に彫られた大岩山日石寺の高さ3メートル余の不動明王像

 立山連峰の麓にある富山県上市町の大岩山日石寺は、奈良時代の高僧、行基が開いたとされる。平安時代に大岩にそのまま彫られたという、高さ3メートル超の不動明王像を拝観できるとあって、古くから「大岩のお不動さん」として親しまれ、参拝者が絶えない。

 本堂に入ると、暗がりにほのかにあかりがともる。目が慣れてくるにつれ、正面に本尊の不動明王が浮かび上がった。前かがみで怒りに震え、こちらに迫ってくるようだ。近寄ってみると、横には2つの童子、阿弥陀如来、行基菩薩(ぼさつ)と思われる僧が、たたずむ。いずれも1つの大岩に彫られたこの磨崖仏(まがいぶつ)は国の重要文化財にもなっている。

 参拝者たちとともに床に腰を下ろして不動明王を見上げる。室町や昭和に火災に見舞われたが保存状態はいい。本堂はこの磨崖仏を覆うように立っている。地元の女性は「どことなく、ぬくもりがあるようなお不動さんです」と話していた。時間とともにふくよかな顔立ちや体形から、参拝者を包み込むような優しさも感じられた。

木漏れ日の中、三重塔に続く階段を上る参拝者。傍らには石像がたたずむ

木漏れ日の中、三重塔に続く階段を上る参拝者。傍らには石像がたたずむ

 同寺の中田真法さん(73)の案内で境内を歩いてみた。各所に大岩が点在し、像が彫られたり、くり抜かれて仏像が置かれたりと、それぞれが信仰の対象になっている。江戸期に造られた三重塔(高さ約15メートル)は壁がない。どうやら造営中に財政難となり省略されたようだ。きらびやかさはないものの、周囲の木立や石仏と調和して、心安まる景色だ。六本滝では滝行も体験できるなど、ゆっくり一日かけて回ることができる。

 中田さんに「隠れスポットがあります」と導かれたのは、寺の横を流れる千巌渓(せんがんけい)と呼ばれる場所。こけむした巨岩を縫うように落差のある渓流が水しぶきを上げる。ここが昔の行者が滝行などの修行をした場所という。いくつもある大岩の隙間から流れ出る空気は、水しぶきをはらみながら交わる。いろいろな気の集まる不思議な空間だった。

 門前町の百段坂沿いには昭和の茶屋といった風情の店が並ぶ。同寺といえば、そうめんが有名だ。帰り際に注文すると丼にそうめんがふとんのようにふんわりと折り畳まれて、黄金色のつゆに浸っている。冷たいつゆとともに完食すると、清涼感に満たされた。 (柳沢研二)

 ▼ガイド 大岩山日石寺へはマイカーの場合、北陸道・立山ICから15分。本堂の拝観は午前8時~午後5時。拝観、駐車とも無料。事前に申し込めば、滝行(1000円)、写経(2000円)も体験できる。(電)076(472)2301

門前町の茶屋で食べたそうめん=いずれも富山県上市町で

門前町の茶屋で食べたそうめん=いずれも富山県上市町で