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【愛知】ほっトラム10歳お祝い 豊鉄、記念号が華やか発車式

ジャンル・エリア : イベント | 愛知 | 鉄道  2018年12月20日

バラの花束やリボンが華やかなほっトラムの記念号=豊橋市駅前大通の駅前電停で

バラの花束やリボンが華やかなほっトラムの記念号=豊橋市駅前大通の駅前電停で

 東海地方唯一の路面電車である豊橋鉄道市内線の全面低床車両「ほっトラム」が19日、運行開始から10周年を迎えた。この日は駅前電停で特別なラッピングを施したほっトラムの「誕生10周年記念号」の発車式があり、子どもから大人まで約100人が一目見ようとかけつけた。

 ほっトラムは、乗降時や車内に段差のないバリアフリー車両として親しまれている。記念号にはリボンをかけたような赤いラインが入っており、市民らへの10年間の感謝や「ほっトラム10歳の誕生日」の意味を込め赤やピンクのバラの花束のイラストも。車体の正面には「誕生10周年」のプレートが飾られている。

 発車式では、豊鉄の伊藤正雄社長が、ほっトラム導入時に市民から1572万2000円の寄付があったことにふれ「市民の皆さまに支援の輪を広げていただいた。改めて感謝を申し上げます」とあいさつ。鉄道ファンらがカメラを構える中、記念号が「ププー」と気笛を鳴らして発車すると大きな拍手が湧いた。記念号は来年2月27日まで運行される。

 豊鉄は、ほっトラム導入10周年に合わせたグッズやイベントを展開している。

 ほっトラムの写真やイラストがプリントされた記念切符の販売は19日にスタート。台紙には製造途中の車両などのレア写真も使われている。1部4枚組で600円(税込み)。発売は1001部で来年12月18日まで、売り切れ次第終了。

 ほっトラムの写真コンテストも開催。優秀作の撮影者は、市内線の貸し切り1往復などの景品がもらえる。来年2月28日まで(必着)。詳細は豊鉄ホームページへ。

◆低床車、追加導入進まず 費用高く、技術的に課題

 「ほっトラム」の導入を多くの人が喜ぶ一方で、この10年間で新たな全面低床車両の導入は進んでおらず、豊鉄も「さらに導入したいのはやまやまだが現時点で計画はない」としている。背景には高額な導入費と技術的な課題がある。

 豊鉄で運行する路面電車16台のうち、全面低床車両はほっトラム1台のみ。全国で路面電車を営業する19事業者のうち14事業者は2台以上の全面低床車両を導入しており、残る4事業者は駅のホームが高く、低床車両導入の必要性が低い。

 豊鉄で1番のネックとなっているのはやはり価格。豊鉄が路面電車車両を導入する場合、通常は他の事業者から中古を安くて200万~300万円で譲り受ける。一方、ほっトラムの導入費は2億4500万円。

 豊鉄の担当者は「利用者の多い県庁所在地の路面電車や公営の事業者と異なり、補助金が下りづらい」と打ち明ける。

 さらに、市内線は単線で、井原電停で二手に分かれる。一方の運動公園方面に向かうには国内の鉄道路線で最も急なカーブを曲がる必要がある。ほっトラムは低床化のため特別な構造をしており、このカーブを曲がろうとすると車両同士がぶつかってしまうため、もう一方の赤岩口方面にしか通行できないことから全面低床車両の大幅増は難しい。

 高齢化が進むなか、低床化が進むのを望む声も聞かれる。沿線にある福祉センターに通う豊橋市栄町の男性(93)は、従来の車両について「つえを持っていると片手がふさがり、もう片方の手で手すりにつかまらなければならず、段差をのぼりづらい」と話す。

 佐原光一市長は今後の全面低床車両導入について「国や県の補助金を求めながらタイミングを見ていきたい」。豊鉄は「新車両の導入は事業者だけではできない。行政と一緒になり、最適な車両を探っていく」と説明している。

 (高橋雪花)